中国に関しましてこのブログを読んでくださる読者からご質問やご意見を良く頂きます。例えば今の状況や今後の経済の見通しや社会情勢などについてです。
私個人としては今後中国には大きく分けて3つの改革が必要になってくると思います。それは「社会構造の改革」、「政治構造の改革」、「経済構造の改革」。
この3つの改革は三角形の線で結ばれていて、どれか一つでも行わなかったり、遅れたりしたら、ハードランディングになる可能性が高いと思います。
10月20日に「チャイナ・ショート」と題した記事をブログにアップしましたが、この中で改革が必要な時期が中国に押し迫っているという内容の記事を2つご紹介いたしました。一つが、国内の治安が悪化していることから「社会構造の改革」が必要な時期が押し迫っているという記事。二つが、下から上へ向かうイノベーションが今後の経済発展に必要不可欠であるが、今の政治、中国共産党の一党独裁では無理であるため「政治構造の改革」が必要な時期が押し迫っているという記事、をご紹介しました。
最後の「経済構造の改革」について考えてみたいと思います。
今の中国の状況を80年代から90年前半のバブル景気の日本と並べて考える人が多くいます。当時の日本も高度経済成長の末期で、日本の膨大な貿易黒字、アメリカの膨大な貿易赤字、皇居の土地の価格=カルフォルニア、ジャパンマネーで海外資産買いあさり、など今の中国に近いと言えば近いです。しかし、その後日本のバブルは弾け、20年近くに渡って低成長率が続いています。
そして今、中国共産党は日本と同じにならないように、日本の失敗を教本としていると言われています。
1970年代末期のようなドル危機の再発を恐れた先進国は、協調的なドル安を図ることで合意した。とりわけ、アメリカの対日貿易赤字が顕著であったため、 実質的に円高ドル安に誘導する内容であった。これが『プラザ合意』である。
発表の翌日の1日(24時間)で、ドル円レートは1ドル235円から約20円下落した。1年後にはドルの価値はほぼ半減し、150円台で取引されるようになった。
アメリカが変動相場・自由経済をプラザ合意で日本に押し付けたことで、ウィキペディアでもありますように:日本においては急速な円高によって『円高不況』が起きると懸念されたため、低金利政策を継続的に採用した。この低金利政策が、不動産や株式に対する投機を促進し、やがてバブル景気をもたらすこととなる。
やがてバブルが弾け、それによってアメリカが「勝ち」日本が「負けた」とされています。
これを知っている中国は、今のアメリカが当時の4倍の2500億米ドル(約20兆円)という、膨大貿易赤字を抱えていながらも、変動相場・自由経済を拒み続けているのです。
そして当時の日本と違い、今のアメリカは中国に変動相場・自由経済を押しつられるようなレバレッジがありません。例えば:
- 日本ほど今の中国はアメリカに依存していない
- アメリカは当時よりも影響力が弱まっている
- 北朝鮮やイランなど中国の影響力が及ぼす問題がある
- 80年代半ばにアメリカが日本に円の切り上げを押しつけたことで、日本は経済的腹切りをさせられることとなった。
- このセオリーが日本の右寄りの考えで、今中国の政府が人民元の切り上げを拒む理由となっている。
- しかし、これは間違っていて、この間違えが中国経済に危険を及ぼす可能性がある。
- 当時の状況はこうである、まず、プラザ合意で円が切り上げられ、以降ひたすら上昇することとなる。
- 切り上げによる競争力低下を日本が容易したのは服従したからではなく、自信に満ちていたからである。切り上げても成長は止まらないと考えていたのである。
- この考えは正しく、結局1986年の不景気は短く浅いものであった。
- そして、円高によって日本企業の海外進出に繋がり、強みになると考えていたのである。
- この考えも正しく、自動車産業などは海外に拠点を作ることとなった。
- さらに、円が強くなることで家計の購買力が強まるこの機会に、日本経済を輸出から内需にシフトする機会だと考えたのである。
- しかし、これが間違いであった。
- 1986年の短くて浅い不景気のあと政府は30ヵ月間、銀行融資の増加、土地の価格の上昇、株価の上昇を見て見ぬふりをしてしまった。
- なぜそうしたのか?それはどんなバブルでもいっしょで「今回は違う」と彼らは考えたのです。彼らはオピニオンリーダーや学者が言う「日本の経済の成長は止められない」や「日本は世界一の経済になる」ことを真に受けたのである。
- 日本は経済的腹切りをしたが、それは円の切り上げによるものではなく、資産価格高騰によって腹を切ったのである。
- 1989年末には世界の株式市場の時価総額の半分が日本にあり、皇居の土地の価格がカルフォルニアの値段と一緒であるとされた。
- このようなことになる必要はなかったのです、なぜならば、プラザ合意でもう一つ標的となった国がドイツであった。
- 1985年から1990年までの間、マルクと円は対ドルでともに約40%上昇した。
- しかし、日経平均がバブルで約3倍になっている間、ドイツのDAX市場は50%しか上昇しなかったのである。
- 分かるように、円の価値が日本を沈めたのではなく、その後の政策的対応が大きな間違いであったのである。
- このため、中国の今後の成長をサボタージュしたいのであれば資産価格上昇による巨大なバブルを作り上げればいいのである。
- そのためには、今の人民元の価値を保てばいいのである。
- そうすれば高い成長率を維持する中国の金利は低成長率を維持するアメリカとペッグされ、低金利のため中国の預金は利回りが高い株式市場や住宅に移り、バブルが出来上がっていく。
- このようになれば、中国のバブルは派手に弾け、コモディティの価格が暴落し、第二弾のデフレが起こり、インドやブラジルやロシアなどのエマージングマーケットも同じように派手に弾けるであろう。
要するに、このまま何もしなければ中国は勝手にバブルを作り上げ、勝手に派手に弾けると言うのがタスカの意見なのである。
いずれにしても中国は近い将来「社会構造の改革」、「政治構造の改革」、「経済構造の改革」が必要になるという難しい局面に入る可能性が高いです。ソフトランディングできれば日本や世界への影響が少ないと思いますが、ハードランディングともなればその爆風はすごいことになるでしょう。