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2011年8月9日火曜日

ダウ、史上6番目の下げ幅

昨晩のニューヨークのダウ平均は634ドル下落しました。これは1896年にダウ平均が始まって以来、115年という長い歴史の中で史上6番目の下げ幅だったのです。

そしてこの1週間の下げ幅は2008年以来の下げ幅になりました。この一週間のチャートが下記となります。












先週の金曜日の時点で売られ過ぎと言われていた中で昨晩の下落なので、相当の痛手を負った人たちがいたのではないかと思います。

このブログでも以前から量的緩和について記載していますが、今回もまた量的緩和を発表するにふさわしい状況だと言えます。明日FRBが会合を開きますので、量的緩和第3弾を発表する可能性があります。

世界の経済がここまでの不透明感に陥ってしまった理由はと言うと、2008年のリーマンショック以降、先進国は経済の失速の穴埋めをしようと大量の国債を発行したことによる借金問題、その借金があるために将来同様の事態がおこっても実弾が無いのではないかという心配が一つの要因だと言えます。

その「将来の同様な事態」の候補としてあがっているのがスペインやイタリアの金利の上昇や中国の景気失速などなどです。

Foreign Policyという雑誌のインタビューでニューヨーク大学の経済学者のNouriel Roubiniは二番底の可能性が高くなったとしていて、その理由として3年前に比べて先進国の借金が膨らんだうえに、増税や緊縮財政を進められる政治状況にないため、今後取れる政策の幅が限定されているとしています。

このような状況なので、投資家は安全を求めて米ドルより「より悪くない」と思われている日本円買いに走っているのですが、日本の場合、借金を保有しているのは日本人とは言え、GDPの220%の借金の日本と100%のアメリカ、それから4年の間に4人の総理大臣と8人の財務大臣の日本とそれぞれ2人ずつのアメリカ、どっちの方がより信用できるのか…

その多額の借金のせいで格付け会社のS&Pによってアメリカ国債の格付けが最高のAAAからAA+で格下げされました。これによってより一層「将来」に対する不安が拡大したため、週末にはG7財務大臣会合を開いたり、各国の首脳がアメリカに対する揺るぎない信頼を発表したりしました。でも、国内の政治家が漁船の船長をどうすればいいのかあたふたしていたのに、電話会議一本で世界中の政治家が一律に米ドルや国債に対する「信頼」を発表するとなると、「本当」に信頼できるのか疑問が湧きます。

今後日本に限らず世界各国ができることは、今までと同じようにお金を印刷するか、借金をするか、税金で吸い上げるかしか方法が無いわけなのですが、この手法自体が今の状況を作ったと言えます。困ったことに、何もやらなければ世界経済はより悪くなりますが、従来通りのことをやっても良くはならないという、なんとも矛盾した状況に立たされているように思います。

このような不安な状況の中で、ものすごい量のお金が安全を求めて世界をさまよっています。たどり着く場所として日本円であったり、金であったりするのですが、このような状況が続く限りは円が強くなり、金の値上がりも続くと考えられます。

日本でもそうであるように、どの国でも変化を嫌い、現状維持をしたいと考えるものです、それがインフレやデフォルトや借金を山積みにしてでも、どんな方法であっても。このよう状況であれば誰もが不安になると思います。その結果が上記のチャートに表されているのです。

2011年8月5日金曜日

久しぶりの更新:円高

久しぶりのブログ更新となります。3月11日の震災以来更新しようと思ってはいたのですが、その気持ちにはなれず1ヶ月が過ぎ、4月中旬には新たなビジネスを始めることとなったことで忙しくなり、半年近く更新を怠ってしまうこととなってしまいました。ここにきてビジネス立ち上げも一段落しましたので更新しようと考えました。

まず始めに、いろいろな方から「更新しないの?」ってお便りをいただきましたので皆様にはお詫びします。これから徐々に更新頻度をあげて行きたいと思っておりますので、これからもよろしくお願い致します。

さて、まずこの半年間の私ですが、3月11日から約1ヶ月間はだいたいの人と同じように、時間が止まったかのように時が進んでいきましたが、4月中旬にとある海外の人と知り合った結果から営業代行のビジネスを開始することとなりました。その準備に7月一杯かかってしまいました、やっと今週から一段落となりました。

一言で営業代行と言っても、リアルな営業、オンラインの営業、そしてコールセンターの営業の3つの要素を兼ね備えたビジネスを目指しております。さらに、ただ営業活動をするだけでなく、マーケティングや顧客管理(CRM)なども含めて、総合的に商品やサービスの販売を目指すというもので、国内だけでなく海外のメーカーなどのお客さまもターゲットに、今後展開して行きたいと思っております。

その最初の商材として販売を開始したのが「ベストウォーター」というドイツ製の逆浸透膜浄水器です。詳しくはこちらのランディングページをご覧いただければと思います→http://www.bestwater-japan.com。現在ホームページの制作を進めておりますので出来上がりましたら改めてご報告致します。

さてさて、本題の経済ですが、昨日の午前中に日銀が4.5兆円という過去最大規模の円売りで単独介入して7月中旬以降ずっと80円を割り込んで、最近では76〜77円代を推移していた円が80円に戻りました。しかし、今日また80円を割り込んでしまい、4.5兆円は焼き石に水という感じになってきました。まぁ、でもそれもそうだよねぇ〜って感じが私にはします。(ましてや、日銀にいらっしゃる頭のいい方々はそんなことは百も承知でしょうけど、無駄でもやらないといけないのでしょう、きっと。)

というのも、昨年からお伝えしていましたが、そもそも日本人から見ると円高かも知れませんが、世界から見るとドル安な訳で、ドル安をどうにかしないと円高はどうにもならない訳です。だから、4.5兆円をアメリカにあげて「これを使って景気付けでもしてください」とでも言った方が円高に効果があるのではないかと思ってしまいます。

もしくは、円高で輸出企業が大変だということなので、社内のリソースを使って「どうすればアメリカの景気を良くできるか委員会」を作って景気底上げ策を提案すれば、アメリカの景気が良くなって輸出が増える上に円安にもなる、という一石二鳥になります。

上記は大げさな表現をしましたが、事実、円高をどうにかするためにはドル安をどうにかしないといけない訳で、ドルを強くするためにはアメリカの景気が回復しないといけないのです。でもそのアメリカの景気はというと、やれ二番底、やれ不景気だ、やれ恐慌だ、という見出しで最近の新聞はにぎわい、株も下落の一途をたどっています。

2008年にリーマンがふっ飛んで世界の景気がおかしくなってから欧米の対応はと言うと、お金を印刷して穴埋めをするという、日本が90年代に行ってきたことをよりスピーディにやっているだけだと思っています。あって言う間にやった、量的緩和第1弾(QE)と第2弾(QE2)、そして今後経済界が期待している第3弾(QE3)と日本がやったことをそのままアメリカが真似ていると言っても過言ではないのです。ということは欧米の景気は良くなっているかのように見えるものの、お金を印刷してその場しのぎで補填をしているだけで、根本的には何も変わっていないのです。同じことをワシントンポストのスティーブン・パールスタインが言っています

そうしますと、円高・ドル安はというと… はい、何も変わらないのです。

2011年3月1日火曜日

見直されはじめた日本

花粉の季節が到来しました。本当にどうにかしてほしいと思います。杉をなぜ植えたんだぁ!と叫びたくなります。そこで調べてみたら、戦後、建設用木材が必要だからということで大量に植えられた杉やヒノキらしいのです。これが日本ではなく、訴訟大国アメリカでしたら集団訴訟で国が訴えられているのではないかと思います、ほんと、エリン・ブロコビッチの世界です。不幸中の幸いなのか、いい思いをしているのは製薬会社で働く花粉症ではない人と花粉がない海外で働く人たちだけではないでしょうか。まったく。

グチはこれくらいにしておきます。

さて、ここ1週間、気になるニュースとしましては、石油やコモディティなどの価格上昇、表に出始めたデモを統制しようとする中国政府、もうすぐ終わりそうなカダフィ政権と、やはりニュージーランドの地震でしょうか。

ニュージーランド
まず、ニュージーランドで亡くなられた方々やその家族にはご冥福をお祈りしたいと思います。まだ発見されていない方も多くいますので1日でも早く見つかることを願っています。

リビア
続きましては、カダフィ政権がそろそろ終わろうとしています。ロッカビー上空で1988年にパンアメリカン航空103便の爆破・墜落を指導したとされるカダフィ大佐。これによってその後のリビアは経済制裁などによって国際的に孤立していましたが、2003年以降、核放棄や103便の爆破責任を認めて賠償を遺族に支払ったことで2006年にアメリカと国交が正常化しました。その後、西側諸国との関係が次第に正常化して、カダフィはアラブのヒーロー的に西側ではもてはやされていました。自国民を空爆するような男をヒーローともてはやした西側の責任はあっても、取られることはないでしょう。

そういう中で、ウォールストリートジャーナルには、そのカダフィ大佐の看護士兼愛人のGalyna Kolotnytska(何て読んだらいいのか検討もつかないので、そのまま)がリビアから脱出したとあります(写真下記)。このほかにも専属パイロットなども脱出したとのことで、沈んでいく船からどんどん逃げ出しているようで、政権の日数も限られていると伝えられています。















なぜ中東を中心にこのような事態になっているのか、その理由のひとつが物価と失業率の上昇とされています。最近このブログでは世界の物価上昇について記載していますが、なぜそうなっているのか、その理由としてあがられるのは、

1. サブプライム問題以降アメリカの金融機関に大量の不良債権が残る
2. これにより貸し渋りが起こり、景気が低迷
3. 金融機関にお金があればバランスシートが正常化するとのことで、量的緩和(QE2)で大量にドルが印刷
4. そうするとドルが安くなる
5. これに負けまいと世界各国でお金が印刷
6. その影響によって世界はじゃぶじゃぶにお金に浸される
7. 余ってお金は投機に走る
8. 石油やコモディティなどである
9. 需要が高まったことで、提供側は値段をつり上げるか、今は売らず、将来価格がもっと上昇してから売ろうとし
10. 石油やコモディティなどの供給が減る
11. ますます値段が上がる
12. 平均所得の低い国や地位の人はものが買えず、不平不満が積もる
13. チュニジア、エジプト、リビアのようになる

マネーサプライ
どれだけのお金が流通しているのか、増えたのか、下記のグラフをご覧頂くと一目瞭然だと思います。それぞれの国によって時間軸が異なりますが、左上のアメリカ、右上の中国、続いてヨーロッパ、日本、英国、インドのM2/M3のマネーサプライをグラフ化しています。



























マーク・ファーバー
Marc Faber Limitedの創業者・社長で投資アナリスト・投資アドバイザーのマーク・ファーバーが今の経済状況について下記YouTubeの中で説明しています。



要約しますと:
・ 我々は絶望的な状況にある
・ 今のブームは作り上げられたものであり、長期的に維持できるものではない
・ そのうち景気は悪くなり、お金をもっと印刷することになる
・ その結果インフレになり、景気が悪化することになり、いわゆるスタグフレーションである
・ このような状況になると国は戦争をすることになり、デリバティブやマーケットなどすべてがクラッシュする
・ コンピュータがクラッシュすると再起動が必要なように、世界も再起動が必要になる
・ このような危機的状況が訪れようとしている時、不動産、株、債券、現金、貴金属など何に投資をすればいいのか、それは分散することです
・ ここ100年のドイツを見ると国債を持っていた人たちは、第一次世界大戦、ハイパーインフレ、第二次世界大戦と3回紙くずになっている
・ 個人的には株の方がいい投資であると思う、それは株だと会社の一部を手に入れる訳で、債券で会社に金を貸すこと、特に国に金を貸すことよりは株の方がいいと思う

と、かなり悲願的な意見になっています。世界がこの先良いのか悪いのか、アメリカが良いのか悪いのか、株が良いのか悪いのか、債券が良いのか悪いのか、は私にはわかりませんが、ファーバーの話しやマネーサプライのグラフを見ていると、キャッシュが勝つとは思いにくいです。

さて、調子に乗っている間にたくさん書こうと思います。

見直され始めている日本?
続きましては日本についてです。フィナンシャルタイムズに「日本に投資すべき理由」と題した記事がありましたので、ご紹介したいと思います。ここ最近、アメリカ、オーストラリア、インドネシア、ブラジルなどの株が上昇している割に日本株はついて行っていないと言われていました。日本株以外が高くなってしまったため、割安株目当てに国外の投資家が日本株を買い始めていると言われ、先日東証からこれを裏付けるデータが発表されていました。

そういう中でフィナンシャルタイムズの記事には:
・ 中央銀行が金融の蛇口を開けてから世界中の資産の価格が上昇している
・ ただ、長期の投資家からすると割安株が少なくなって来ている状況である
・ 苦し紛れのあまり、ファンドマネージャーは長らくトレンドから外れている日本株に目を向け始めている
・ 彼らは無駄な努力をしているのであろうか?
・ 20年近くデフレが続くと思われている日本だが、実際に始まったのは1999年からである、しかもデフレになってからも経済成長は崩壊しなかったのである
・ OECDのキャプタあたりのGDP成長率を見ると、2008年までの10年の間、日本は若干アメリカに劣っているだけで、ここ5年で見ると若干アメリカを上回っていることがわかる
・ さらに理解されていないのが日本の人口問題である
・ 日本の人口が減少しているにもかかわらず、キャピタあたりの成長率は上昇しているということは生産性が高まったということになる
・ Smithers & Coのアンドリュー・スミザーズによると労働人口は1995年以来減少を続けているが、非労働人口対労働人口の依存率のピークは過ぎようとしているという
・ 先進国の多くはこのピークをこれから向かうことになっている
・ これまでの日本企業の悪いクセだった過度な資本投資、株式の希薄化、少ない資本収益率などが改善され、世界的に競争力のあるものにしようとする動きが見られる
・ 日本国内の成長率が乏しいと判断した企業は海外投資にシフトするなどして、変化し始めている、このいい例が新日本製鐵と住友金属工業の合併である
・ ピーター・タスカによると2000年以降Topix銘柄企業のEPSの平均が200%であるとしている
・ 企業の成長と利益が株主のリターンにどれだけ反映されるかがこれまでの日本の問題であった、CLSAがACGAとともに行った調査では、昨年度は日本がガバナンスにおいて最も改善したとされている
・ ただ、海外の資本はインカムではなく、キャピタルゲインを求めている
・ しかし、そのまま上手くいかない理由として、銀行の過小資本やパブリックセクターにおける借金である
・ 低成長とインフレがない環境の中で借金の山を返すのは相当難しいが、これらの借金のほとんどは日本国内の投資家が保有しているものなので、格付け機関が何を言おうと我々は気にすることはない
・ 1990年以降日本国債のイールドの上昇にベットした投資家の多くは大きな傷口を負ったことを忘れずに
・ 私は日本が魅力的に見える。

アカデミー賞ドキュメンタリー賞
最後に昨日アカデミー賞で「英国王のスピーチ」が作品賞をとりましたが、サブプライム問題を題材にしたドキュメンタリーでドキュメンタリー賞を受賞した「Inside Job」というのもなかなか面白そうでした。
監督のチャールズ・ファーガソン氏は受賞の際

"Forgive me, I must start by pointing out that three years after our horrific financial crisis caused by financial fraud, not a single financial executive has gone to jail, and that’s wrong."

「まず始めに指摘したいのが、金融詐欺によって引き起こされた金融危機から3年経つが金融機関の経営者誰一人として牢屋にいない、それは間違いである」

とスピーチしていました。

トレーラーがありましたので下記に添付します。申し訳ありません、英語のものしかなかったので、日本語を探してあればまた添付します!あと、日本で公開されるのか、その場合いつなのか確認します。ご存知の方がいらっしゃればご連絡ください!宜しくお願いします!

2011年2月21日月曜日

食料の価格と中国

更新がお久しぶりになってしまいまして申し訳ありません。

この間アメリカでピッツバーグ・スティラーズ対グリーンベイ・パッカーズとの間でスーパーボウルが行われ、結局グリーンベイが勝ちましたが、毎年話題なのがCMです。何てったって30秒のスポットで2億円、制作費を入れると4億円以上とされているので、いつも楽しみにしていますが、今年私が一番好きだったのがこちらです:



他のアドも観たい方はこちらをご覧ください:
http://www.time.com/time/specials/packages/completelist/0,29569,2046668,00.html

さて、前回のブログ記事の続きになるのですが、最近世界で大変なのがコモディティの価格上昇です。

下記は「ELEMENTS Rogers Intl Commodity Index - Agriculture Total Return ETN (Public, NYSE:RJA)」と言いまして、農業セクター全体の価格を示したもので、ニューヨークに上場しているインデックスです。


















おわかりになるかと思いますが、ここ8ヶ月ほどで価格が65%上昇しています。もし投資をしていたらかなりいいリターンを得ていたことになります(まだ上昇が続くかもしれませんが)。

でも、一日100円とか200円とかで生活している途上国の人々にしてみたらたまったものではありませんし、13億人を食べさせないといけない中国政府にしてもたまったものではありません。

中国国民としてみれば、今の政府で食べ物が食べられなければ国民はどうするか?

このような状況を引き起こしているがアメリカの大量のドルのばらまきで余ったお金が投機に流れ込んだのが一つの理由です。

ということは中国政府にしてみたら、アメリカにはばらまきを止めてもらいたい訳です。問題はどのようにして止めてもらうかです。

「お願いだから止めて」と言っても無理でしょう。アメリカだって選挙があるし、国民の生活、経済があるので、そう易々とは止められません、引けません。

お願いしてもダメなら、中国はどうするか?先が思いやられます。

2011年2月7日月曜日

QE2と中東問題の関係

皆様ブログの更新を1ヶ月以上も怠ってしまいまして申し訳ありませんでした。

以前からご覧頂いている方やツイッターでフォローいただいている方はご存知だと思いますが1月下旬に会社を設立致しました、その準備や営業などで少しバタバタしてしまいました(いい訳になりますが…)。

というわけで、会社は無事に設立されました。ホームページも2月下旬にはアップできるかと思いますので、アップしましたらまたご報告をさせて頂きます。ここ1〜2ヶ月は設立の準備とともに異業種交流会や会社を経営されている方のご紹介でいろいろな方とお会いしてビジネスチャンスやアイディアなどを発展する機会を多く作っていました。

そういう意味では、今まで会社員でいるときとは全く違う考え方や話し方をしている自分に気づきました。やはり人と人とのつながりが重要だと最近つくづく感じるようになりました。

さて、この1ヶ月間いろいろとニュースがありましたが、やはり一番気になったのがエジプトのプレ革命でしょうか。チュニジアから始まった改革(と思われる)運動はその後エジプトやヨルダンへと連鎖をして行きましたが、私は中東のベルリンの壁とでも言うべく、今回の一連の改革(と思われる)運動はベルリンの崩壊に近い感覚を覚えました。というのも当時はCNNが伝える情報にみながテレビに釘付けになっていたと思いますが、今はアルジャジーラの映像にみんなが釘付けです。そしてベルリンと同じように、今回のチュニジアやエジプトでは、西側諸国は全く事前に感知していなかったところや、今後どうなるのか誰も全くわからないところなどは、似ている気がしています。

IMFが2010年4月にエジプトに関するレポートを出しましたが、その内容は2010年2月に2週間以上かけて調査した結果をレポートしたものですが、全く持って的を外していることがわかります。

そもそもなぜ中東でこのようなことになってしまったのか?私は今回の中東の問題はアメリカの量的緩和(QE2)によって引き起こされていると思っています。以前このブログでも(アイルランド支援とアメリカの量的緩和に対抗する中国の量的規制)何度かお伝えしましたが、FRBは中国人民元へプレッシャーをかけるためにも量的緩和を行い、中国政府に人民元を切り上げるか、価値のないドルをひたすら買うか、を選択させるために行ったとお伝えしました。その副作用がチュニジアやエジプトだと思われます。

というのも、QE2によって世界はドルでじゃぶじゃぶに浸されたことで余った金が投機に走り始めました。ドル建てで取引されているコモディティの価格や先物に投機ドルが集まったことで価格が上昇し、その結果インフレになってしまい、途上国を中心に物価が上昇してしまっています。アメリカは製品を作って輸出できなくなったので、その代わりにインフレを輸出しているのです。先月、1月の1ヶ月の間に小麦が6%、砂糖が6%、コーンが8%、米が10%、コットンが17%も上昇しています。このためFTには物価上昇の専用ページまで立ち上がっています。

なので、アメリカや日本の株価が上昇していますが、これは決して景気が回復したら上昇しているのではなく、QE2によって印刷された余ったお金が流れているからと考えた方がいいと思います。

ということで、ブルームバーグには「中国住宅、日本やアメリカのバブル期と同レベルになる」と題した記事がありました。

この中でCitigroupの調査として、2010年における中国のGDPの内6.1%が住宅投資によって作られたものであるとし、これは2005年のアメリカと同レベル、さらに2%で1970年代の日本に並ぶとしています。

アメリカのQE2インフレは次にどこに輸出されるか注目されます。

2011年1月7日金曜日

2011年も宜しくお願い致します

あけましておめでとうございます、今年も宜しくお願い致します。
しばらくの間ブログの更新を怠っていました、申し訳ありませんでした。

皆様年末年始はいかが過ごされましたか?私は妻の実家がある神戸に2週間ほど行っておりました。神戸に行って感じたことが二つほどありました、一つは、神戸は東京より大分寒いと言うこと、凍える寒さでした。なんで南にある神戸が北の東京より寒いのだろうと不思議です。まぁ、気象予報士に聴けば潮や大気の流れだの何だのと全うな答えがあるのだと思います、でも不思議。

二つは、神戸の経済も冷えきっているということでしょうか。けっして神戸だけの話しではなく、地方の多くの都市がそうだと思います。もちろん、セクターによっても浮き沈みがあると思いますが、親戚の方などと話しをしていると「景気えーなぁ」という話しは一度も聴きませんでした。逆に「民主党になってろくなことになっていない、お先真っ暗」的な話しが多かったと思います。

2011年がどうなるのか?菅直人の先日の記者会見での今年の抱負を聴いているとあまり期待を持てないと思ったのは私だけでしょうか?

経済に関して主な内容としては、TPPへの加入、消費税増税、政府への信頼感を取り戻すこと、とのことでした。しかし、TPPに加入することで農業などの競争力が高まるかもしれませんが、農業や漁業や林業が日本のGDPで占める割合はわずかなので、経済に与える影響も少ないと思われます。でも、良いことだと思いますので、是非実行してほしいです。

消費税の増税に関しては、将来の国の財政に対する不安が軽減されるかもしれませんが、消費が低迷する可能性が高いので、相殺されることになります。そもそもデフレが続く日本で、全体のパイが小さくなっている中で企業はベルトを締めたり海外に進出したりする中で、国は歳出カットをしないのはどういうこと?と考えてしまいます。税収入が減ったからと言って、じゃー増税だー、というのはお門違いであり、その前にやることがあるだろう、と思います。

民主党になってから1年足らず、彼らの(無)政策が日本経済に大きな影響を与えたとは思いませんので、民主党政策が今の経済状況の原因だと考えておりません。しかし、民主党になってから「お先真っ暗」感が深まったのは確かだと思います。それは活気だったり、元気だったり、期待感だったり、前向き感だったりが無くなった、少なくとも減ったと思います。

今の日本経済に必要なのは景気刺激策や経済対策などではなく、将来への希望や期待が持てる「空気」が日本に流れることのように思います。そうなることで若い人の間でやる気が生まれ、新しい方向に向かうのだと思います。

そのためには「政治家や国が何もかもすべてを良くしてくれる」と言ったような甘えた期待を国民が持ってはダメで、自己責任をもっと強く持つ必要があるのではないかと思います。

というわけで、フィナンシャルタイムスには「税金男:菅」、もう一つ、「菅、元気を取り戻すレシピなんて分かっていない」やウォールストリートジャーナルには「東京の財政における償いの時」と言ったような年始早々今年が思いやられるような記事が海外のメディアでは見られました。

ます、「税金男:菅」ですが、内容としましては、
– 税制のい直しは長く言われてきたが、政治家が増税と言った次の選挙では必ず負けているのだから、それでも増税と言った菅直人は賞賛する必要がある。
– 日本の財政を健全にするためには増税は不可欠である。
– これだけ借金があるにもかかわらずクレジットレーティングがいまだに高い日本であるが、今後日本が高齢化していくにつれて国はより多くの国債を発行する必要になるだろうが、その国債を今買っている人が高齢になって買わなくなり、調達が難しくなるであろう。
– このことを政治家は分かっているから、職業上の危険が及ぼうが定期的に増税を訴えるのである。
– 特別利益団体の利害を省き、消費税増税の反対する大きな理由が1997年に5%に増税した後に起きた不景気が悪い思い出としてあるからである。
– もし菅直人が国の将来を考えるべきであるとして、党内を取りまとめ、野党を説得して増税ができれば国民の政治家に対する不信感を減らすことができるかもしれない。
– 増税することでお金を貯金するより使う人が増えることは日本がいま必要なことである。

フィナンシャルタイムスのもう一つの記事、「菅、元気を取り戻すレシピなんて分かっていない」はあまり目新しい話しはなかったので詳細は省きますが、最後に書いてあった一言、「菅直人が日本を元気に戻したいというならば、はじめに本人が元気を取り戻す必要がある」に、ふむふむと納得しておりました。

続きましてウォールストリートジャーナルの「東京の財政における償いの時」という記事の内容です、

– 日本の政治は大変な状況である。
– 20%という低支持率の民主党政権。菅直人は同じ党の小沢一郎を追い出そうとしているが、それによって支持率は高まるかもしれないが、離党によって過半数を割るかもしれない。
– そして、今年の政策について記者会見し、消費増税という不人気な政策を発表したが、増税によって間違いなく経済を悪化させるであろう。
– もうしばらくしたら新たな総理が誕生するであろう。それが誰であっても、日本が最悪な結末を迎える前に、今日本が抱える問題を解決する必要がある。
– 支出を減らして減税をしない限り、日本はギリシャのようになるであろう。
– 菅直人が発表した今年の予算はまたしても史上最大規模の国債の発行によって、GDPの200%の借金に新たに上乗せされることになる。
– 8760億米ドル(約100兆円)の支出の内、5420億米ドルは国債発行、対して国の収入はたったの5010億米ドルである。
– 高齢化していくにつれ、年金と医療保険における過去の政治家の政策が今の日本を沈没しかけている。
– バブルが弾けて20年あまり、社会的な損失をどこにあてがうかという議論になると日本の政治機能は停止してしまうのである。
– それは、今のアメリカのように劇的なリストラ(斉藤:日本の場合リストラは企業の人員削減という意味合いが強いが、英語の場合は社会形成を含めて形を変える意味合いがあります)を断行するより、90年代の日本の場合、日本政府は銀行に不良債権を保有するよう指示していた。
– それによって日本は安定しているかのように見えるが、創造的破壊がない限り経済は成長しないのである。
– 来年の利息の支払いに2630億米ドル必要だと試算されているが、それは10年国債が2%の金利の場合である。
– 今のところ金利は2%の水準を保つと思われるが、最近のオークションで投資家の国債に対する欲が減ってきている傾向が見える。
– そしてまた、来年には国の借金が国民の預貯金を上回ると試算されている。もし国内で国債を吸収できない状況となると海外の投資家に目を向けないといけなくなるが、その場合はこのような金利で調達は難しいであろう。
– そのようなことになれば日本の予算は派手に吹っ飛ぶことになる。国と地方を合わせて約11兆米ドル(約900兆円)の借金があるとされているが、金利が1%上昇しただけで1100億米ドル支出が増えることになる。
– ということは日本が増税しようが支出を減らそうが、借金は増えていく一方となる。これは見落としがちな「続くことができないものは続かない」というハワード・スタインhttp://en.wikipedia.org/wiki/Herbert_Stein の法則に日本は突き当たるのである。遅かれ早かれ何らかの形で日本は危機を向かえることになる。
– 菅直人もしくはその後継者が他の政治家を納得させ、高齢者の怒りを押し切って社会保障の支出を減らさない限り、将来途方もない増税という形でより大きな損害を国民全体で受けることになるであろう。
– そうなれば、菅直人が言う消費税増税なんてタイタニックの上でカードをシャッフルしているような無意味さを持つことになる。

2010年12月15日水曜日

2011年の予想(その2:ジョセフ・スティグリッツ)

コロンビア大学教授でノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツが2011年の経済について予想した投稿した記事がありましたので、前回に引き続き来年の予想をご紹介したいと思います。

— 世界経済は年初めより、深く分裂して終わろうとしている。インド、中国や東南アジアの途上国は力強く成長しているが、方やヨーロッパやアメリカはスタグフレーション、日本型の停滞と高い失業率が続いている。

— 先進国が直面している問題は雇用なき景気回復ではなく、沈滞した回復である。もしくはそれよりもひどい二番底の景気後退の可能性である。

— アジアの経済は世界経済を引っ張り上げるには小さすぎるが、コモディティの値段をつり上げるには十分な規模があるという、珍しい問題・リスクが生まれようとしている。

— アメリカでは量的緩和をすることで経済を活性化しようとしているが、これは裏目に出る可能性がある。それは、グローバル化された金融市場においてお金というものは最もリターンが見込めるところに流れるが、その場合、それはアメリカではなくアジアになるはずである。そうなると、お金は必要とするところには届かず、必要でないところにたどり着き、それによって、資産やコモディティにお金が流れ、価格をつり上げることになる。特に途上国でそうなる可能性がある。

— 高いレベルの余剰能力があるヨーロッパやアメリカにおいて、量的緩和はインフレを引き起こす可能性は低いと思われる。しかしながら、将来のインフレに対する懸念が長期国債の金利をつり上げる可能性があり、それはFRBが本来やろうとしていることの正反対の結果につながる。

— しかし、これだけが現在の世界経済が抱えている最も重要な問題ではない。世界各国、特にヨーロッパでは緊縮予算の傾向が広がっており、各国の債務返済の見通しが悪いことでマーケットが不安定となっていることが、今世界が直面している最も大きな問題である。

— 時期尚早な財政健全化がもたらす結果は目に見えている:成長が減速し、税収入が途絶え、財政赤字削減は失敗に終わる。

— 記録的に低い金利でお金を借りられるアメリカが現在しないといけないことは、今まで怠ってきた公共投資である。大規模な公共投資をすることで短期的な雇用を生みつつ長期的な成長をもたらし、さらには将来、国の負債の削減につながることになる。しかしながら、先見性のない金融市場は支出削減の圧力をかけている。

— さらに、ほかの経済問題も政治の行き詰まりから何も解決しないことも見えている。例えば、住宅の差し押さえ問題、中小企業の資金不足、従来これら企業に融資してきた中小銀行の倒産など。

— 反対にヨーロッパはと言うと、今より良くなることはないであろう。

— やっとの思いでギリシャとアイルランドを救出したヨーロッパであるが、ヨーロッパの自由市場経済はアメリカと同様にワークしないことが示された。

— アイルランドを見ればわかるように、土地バブルが弾けるとそのあとには大きな負債と過剰なキャパシティが残り、並大抵の努力では減らないのである、特に政治的に強いコネクションを持つ銀行が抵抗した場合にはなおさらである。

— 2011年の経済を予想するのはそれほど面白いものではない。答えは「暗い」で済むからである。アップサイドは少なく、ダウンサイドは大きいであろう。

— それより重要な質問は、ヨーロッパとアメリカが回復するにはどれだけ時間が必要なのか?そのマーケットが回復しないまま、アジアはどこまで成長を続けられるのか?である。

— 私は国内マーケットにフォーカスすることで成長は続くと予想する。そのためには中国もインドも経済の形を大きく変える必要があると思うが、可能であると考える。

— しかし、ヨーロッパとアメリカについては悲願的である。

— 今の問題を解決するには過剰にある能力を必要とするところにシフトすれば良いのである。例えば、環境問題の解決に向けて経済をシフトすれば良いのである。しかし、そのためには政治的な問題がある。

— アメリカの場合、共和党は経済を回復させるより、オバマが失敗することを望んでいる。

— ヨーロッパの場合27の国々がそれぞれの方向に向かって進もうとしている。そう考えるとアイルランドとギリシャを救出できたことは奇跡である。

— アメリカとヨーロッパでは、自由市場によってバブルが自由に成長できて、それが現在の問題を生むこととなったのである。これにより、自由市場の考えが衰退するかと思えば、その自由市場が緊縮予算を求めていることで政府や経済をドツボに嵌めようしているのである。

— もし政治が問題であるならば、政治が変わらなければ問題が解決しないことになる。それとも、過剰なキャパシティが自然と無くなるまで待つか、それとも経済に組み込まれている回復作用が時間をかけて直すかである。いずれにしても勝利はすぐそこにはない。

2011年は暗いようです、スティグリッツによると。
しかし、これを読みますと、過剰なキャパシティ、経済のシフト、緊縮予算、不良債権、政治の問題などなど、昔と今の日本に当てはまることがたくさんあるように思います。人間は人種に関わらず考えること・やることは変わらないのでしょうか?