アメリカのアジア太平洋地域での活動が活発になっています。今のこの地域の状況を簡単に言うと、中国が領土と影響力を拡大しようとすることで反発が起き、それによって真空が生まれ、そこにアメリカが入ろうとしています。
9月24日の「(続)尖閣諸島と中国との関係:アメリカの意義」と題したブログ記事にて:
「そして最近は中国が経済的に飛躍してきて、軍事力も強化する中で、半信半疑ながらも中国に近寄る国が増えていました。考え方としては「アジア太平洋地域の安全保障はアメリカが守るものではなく、中国も含めてみんなが協力して維持していくもの」というものでオーストラリア、タイ、インドネシア、フィリピン、日本(民主党政権になって特に)も含めてアメリカ寄りから中国に軸足をシフトしていたのです。
これは中国の狙いで、アメリカ軍存在を無くさない限り、いつまでたっても理想の影響力をアジア太平洋地域で発揮できなかったのです。しかし、今回の件で、中国が強硬姿勢を取ってしまったことで、中国に向かっていたアジア各国の軸足が再びアメリカに戻る可能性が高いと思います。
11月6日からオバマ大統領はインド、インドネシア、韓国、日本の4カ国を約1週間かけて訪問する予定。このことについて朝日新聞では「ホワイトハウス高官は「歴訪先がいずれも民主主義国なのは偶然ではない」と話す。対中外交の山場となる年明けの胡錦濤(フー・チンタオ)中国国家主席の公式訪米を前に、同盟国や新興国と「共通の価値観」に基づく連帯を示し、中国の覇権拡大を牽制するのが狙いだ。国家安全保障会議のベーダー・アジア上級部長は「中国の台頭は各国の関心事」とし、対中政策が話題になると語った、としています。
そしてクリントン国務長官とゲーツ国防長官もまた昨日まで10日かけてハワイを経由してベトナム、中国、カンボジア、マレーシア、パプアニューギニア、ニュージランドそしてオーストラリアを訪問。オーストラリアの新聞シドニーモーニングヘラルドには「中国が脅威であることを認めるラッド外相」にもあるように、アジア太平洋地域における中国の脅威について話し合ったことを認めている。
この展開でもっとも好影響を受けているのがベトナムだと思います。ヒラリー・クリントンは4カ月の間に2回訪れていて、日本もまた10月末にはレアアースの共同開発などに合意しており、ベトナムの戦略的重要性が増してきています。
Washington Postで「ベトナムが中国に対抗する歴史的転換」とThe Diplomatで「なぜ中国は孤立しようとしているのか?」と今のベトナムの状況について面白い記事を発見しましたのでご紹介したいと思います。
まずワシントン・ポスト:
- ベトナム軍事博物館で3週間前からアメリカとフランスとの戦争に関する資料や兵器などが展示されている。
- それとともに1077年、1258年、14世紀、18世紀に起きた中国との戦争に関するものも展示されている。
- 中国が西側戦略者と同じ扱いにすることができたベトナムにとつて、心理的に大きな意味を持つものである。
- それは反対に中国にとって大きな問題である。
- 中国の最近の威圧的姿勢の影響から、中国共産党はベトナム共産党とっての良きパートナーから長年の北の帝国になりつつある。
- そして今、ベトナムは歴史転機として中国の脅威に対するヘッジとして、世界と仲良くなろうとしている。
- そのひとつがアメリカである。
- ベトナムの国防長官代理のNguyen Chi Vinhは「新しい友達ができることはいいことだ。それが昔の敵であるならば特にいいことだ」としている。
- ある元高官は「アメリカは昔中国の脅威からベトナムで戦争をしたが、アメリカは今中国の脅威からベトナムと仲良くしようとしている」と言う。
- 作家のBao Ninhは「ベトナム軍の人間に聞いても中国よりアメリカが好きだと言うと思う」としている。
- しかし、ベトナムは中国の気分を乱しすぎないよう、反中の新聞記事の掲載などを制限している。
ザ・ディプロマットでは:
- ベトナムのNguyen Tan Dung首相はCam Ranh Bayにある港を再開し、外国の軍艦や潜水艦などにサービスを提供すると発表した。
- 尖閣諸島で中国と日本が口論しているが、これについて中国誌のGlobal Timesは前原外相のことを過激派とし、論説で「中国のこれから上昇は不可避なものであり、前原は日本をこの波に逆らおうとさせてはならない、もしそうなった場合には日本は耐え難い状況になりかねない」としている。
- 中国が日本を攻撃している間、ベトナムはレアアースの開発で難しい立場にある日本と提携することを発表した。
- 中国の強硬姿勢がアメリカをアジア太平洋地域により強く結び付けている。
- 明らかなのは、アジア太平洋地域の領土問題によって地域の結びつきを悪くしているのが日本のせいであるとする中国の考えは理由にはならない、もし尖閣諸島の問題で中国が孤立するのであれば、それは中国自身のせいある。
この様にベトナム、インド、オーストラリア、アメリカなどの国が対中国で結びつきを強くする一方で、中国はロシアとお結びつきを強化しているようです。
新華社通信では「中国とロシア、軍事的結びつきを進めると約束」とし、両国の軍幹部が北京で会談し、戦略的な提携を進めるとしています。
さらにAsiaNewsでは「太平洋の優位性確保に向けて対日本でロシアと中国は協力」とし、北と南から日本を包囲しようとしているとしている。
このような状況で日本はというと、菅総理が見ていないとする流出ビデオの犯人探し、挙句の果てには身内の田中真紀子から「首相は力量ない」と言われる始末。それでも菅総理「石にかじりついても頑張る」そうです。
そろそろ野党に慣れてきた自民党も足を引っ張るだけでなく、民主党とともに、日本の将来の「戦略」というものを本気で考えてもいい時期に差し掛かっているような気がします。
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