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2010年11月10日水曜日

TPPから見るジャパン・ナッシングとヘリテージ財

ちょっと話題に乗り遅れた感がありましたのでこれまで書きませんでしたが、今朝「書いては?」とツイッターでネタ提供を頂きましたので、今日は今話題のTPPに関して書かせていただこうかと思います。

このブログでも何回か書かせていただきましたが、今、日本が経済的な極地に置かれている大きな要因の一つが競争力の低下だと思っています。厳密に言うと競争力のある経済と競争力のない経済に二分していると思います。その二つが相殺した結果、日本全体の経済は弱くなっているのだと思っています。

まず、競争力のある経済は主に輸出関連企業です、その理由は長年に渡って海外企業と戦ったことにより経験です。反対に競争力のない経済は日本国内をマーケットとしてきた内需型企業です、特に農業やサービス関連企業となります。

競争力の高い企業や業種は「開国」を望み、競争力の低い企業や業種は「鎖国」を望む。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関しては最近メディアで散々取り上げられていますのでご存じだと思いますが、簡単に言いますと「数カ国間で自由に貿易をする」というもの。

この協定に日本が参加すると、開国を望む人や企業にとっていいのですが、鎖国を望む人や企業にとって悪いことです。

そのTPPについてウィキペディアによると、「20065月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で発効した経済連携協定。加盟国間の経済制度、即ち、サービス、人の移動、基準認証などに於ける整合性を図り、高い水準の関税撤廃をめざしている」としています。

この様に、TPP2015年までに関税の完全撤廃を求めているため、日本だけでなく参加する国にある関税によって守られている企業や業種は痛むことになりますが、反対に今まで関税によって損をしていた企業や業種にとってはうれしいことになります。

さらにウィキペディアでは、「2010119日、菅内閣は関係国との間での経済連携強化に向け「国を開く」という観点から、農業分野、人の移動分野および規制制度改革分野において、適切な国内改革を先行的に推進すると閣議決定を行った。与野党でも賛否両論の中核である農業分野は関係大臣からなる「農業構造改革推進本部(仮称)」を設置し、20116月をめどに基本方針を決定する。さらに情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めるとともに、関係国との協議を始めるとしている」としています。

要するに、開国すると農業分野で特に痛みを伴うことになるので、20116月までにどうすればいいか考えようということのようです。でも来年11月にはTPPの交渉は終わる予定です。ということは、日本は来年6月にどうするか基本方針を決めて、5ヶ月間かけて10カ国以上の国と詳細について交渉をし、参加の有無を決めるそうです。

日本の政治家は玉虫色の決着を好みますが、今回の場合、交渉に与えられた時間が無いうえ、協定の趣旨が関税を撤廃して開国をするか、関税を維持して鎖国をするか、どちらかの選択筋しかないのです。

「ネックは主に農業問題だが、農業関係者も何が何でも反対というひとばかりではない。これを機会に、自立した農業を目指す機運も高まっている。戸別所得補償制度を上手に使えば自由化の風波を軽減し、農業の競争力強化も展望できるはずだ。

政府は菅首相を議長とする「農業構造改革推進本部」を設置し、来年6月をめどに農業再生の基本方針をまとめる。これは事実上TPP対策でもあり、その内容とタイミングがTPP参加のカギだ。必要な農業保護はしなければならず、それなりの予算措置は当然だ。しかし、かつてコメの関税化に際して6兆円もの予算をつけながら、農業土木に費消してしまった苦い経験がある。その愚を繰り返してはならない。

時間的余裕はあまりない。米国は来年11月にハワイで開かれるAPEC首脳会議で、TPP交渉の終結を宣言する意向だ。9カ国のうち1カ国でも反対すれば「参加」は認められない。そしてTPPを日本にとってメリットの多いものにしようと思えば、できるだけ早く参加してルール作りに加わる必要がある。そのためには国内調整を急がなければならない。「政治主導」の正念場だ。

私の家では当然コメを食べますが、買うときはオンライン通販で直接農家から買っています。オンラインでお米を売っている農家がどれだけいて、どれだけの人が買っているのか分かりませんが、少なくともそこにはマーケットがあり、アイディア次第でビジネスを拡張する余地がいくらでもあると思います。極端にいえば、関税が無くなることでオーストラリアからお米が入ってくるのであれば、オーストラリアへの輸出関税が無くなるのだから、日本の農家がオーストラリアの農家に勝る何かがあれば、オーストラリアにお米を輸出することができるわけです。

そう言う中でProject Syndicateに「江戸時代を夢見る日本」というGuy Sormanの記事で、猪瀬直樹副都知事の「新江戸時代論」というものを取り上げています。それは、減少する裕福な人口が伝統と再びつながり、ゼロ成長をするというもの。日本のことを非グローバライゼーション化と呼び、非現実的な夢としています。日本が江戸時代の夢から早く目覚めないと中国帝国の一部になりかねないと、警告を鳴らしています。

よく議論で、日本は世界と競争しなくてもいい、競争力が無くてもいい、と聞きます。これはこれで一つの考え方であり、まっとうな議論だとは思います。しかし、日本が競争したくなく・その気がなくても、世界は勝手に競争し、競争力を高めています。

この様な状況が続くと、競争力のある企業や業種が競争力のない企業が業種を食べさせていくことになります。社会保障と一緒です、もし政府が現状を維持するために税率を倍にしますと言ったらどうされますか?日本国内の競争力がある企業や国民はどんどん海外に出ていくと思います。そうなれば日本は益々弱くなり、ジャパン・パッシングどころかジャパン・ナッシングになりかねません。

今の日本の現状について、米国政府の政策決定に大きな影響力を持つとされるヘリテージ財団119日にリサーチペーパーとして発表していましたのでご紹介したいと思います。タイトルは「オバマ訪日で日本にあまり期待してもだめ」というもの。

-       APECによって東京の地域におけるリーダーシップを示すことや菅内閣の支持率暴落を食い止めるものと期待したが、その可能性は無くなった。
-       それよりも、民主党は臆病な外交政策が中国とロシアの冒険主義を勢いづかせてしまい、このことに対する批判にさらされている。
-       そして、民主党は日本の安全を保証していたアメリカを疎外してしまったことで日本は今、危険な海を漂流している。
-       民主党の経済政策もまた無能である。それは、オバマ政権が重要視するTPPに対して、民主党は参加すると発表出来ず、単に「さらに情報を集め、議論をし、参加するかしないか決める」とし、リーダーシップを示しているとは言い難い。
-       オバマ大統領は菅総理に対して北朝鮮や中国の脅威について話をし、安全保障に関する二国間同盟の重要性について認識させる必要がある。
-       ワシントンは日本にあまり期待しても仕方がない。日本が尖閣諸島で中国ともめていた時、アメリカは日本の安全保障を約束したにもかかわらず、民主党は中国のプレッシャーに屈したのである。
-       しかし、去年政権を取ってから荒々しかった外交政策も、最近少しずつそうではなくなり、そのひとつが前原外相となったことでより現実的な政策を進める可能性があることである。
-       民主党政権は少しずつアメリカとの関係を修復しようとし、正しいことを言うようになってきたが、沖縄の知事選挙が終わるまで具体的な動きをしないようである。
-       沖縄の海兵隊再編問題が解決しなかったからオバマ大統領と菅総理とのサミットのあとの記者会見で安全保障に関する共同声明が無かったのである。
-       今回のオバマ大統領のアジアツアーの中でもっとも何も期待できないのが日本への訪問である。
-       ただ、日米同盟は太平洋地域におけるアメリカの戦略にとって最も重要であるとともに、地域の安定にとっても重要であるため、オバマ大統領が日本のリーダーと連携するのは重要である。
-       アメリカの対中政策へのヘッジとして日本は最重要であり、オバマ大統領はこの解釈をおろそかにしてはいけない。

としていますが、なんともアメリカ政府にとって民主党政権はやりにくい相手であるということが見えてきます。

日本も早く現実路線に戻り、競争力を付け、威厳がある国に戻り、ジャパン・ナッシングとならないようにしてほしいと強くに思います。

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