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2010年12月15日水曜日

2011年の予想(その2:ジョセフ・スティグリッツ)

コロンビア大学教授でノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツが2011年の経済について予想した投稿した記事がありましたので、前回に引き続き来年の予想をご紹介したいと思います。

— 世界経済は年初めより、深く分裂して終わろうとしている。インド、中国や東南アジアの途上国は力強く成長しているが、方やヨーロッパやアメリカはスタグフレーション、日本型の停滞と高い失業率が続いている。

— 先進国が直面している問題は雇用なき景気回復ではなく、沈滞した回復である。もしくはそれよりもひどい二番底の景気後退の可能性である。

— アジアの経済は世界経済を引っ張り上げるには小さすぎるが、コモディティの値段をつり上げるには十分な規模があるという、珍しい問題・リスクが生まれようとしている。

— アメリカでは量的緩和をすることで経済を活性化しようとしているが、これは裏目に出る可能性がある。それは、グローバル化された金融市場においてお金というものは最もリターンが見込めるところに流れるが、その場合、それはアメリカではなくアジアになるはずである。そうなると、お金は必要とするところには届かず、必要でないところにたどり着き、それによって、資産やコモディティにお金が流れ、価格をつり上げることになる。特に途上国でそうなる可能性がある。

— 高いレベルの余剰能力があるヨーロッパやアメリカにおいて、量的緩和はインフレを引き起こす可能性は低いと思われる。しかしながら、将来のインフレに対する懸念が長期国債の金利をつり上げる可能性があり、それはFRBが本来やろうとしていることの正反対の結果につながる。

— しかし、これだけが現在の世界経済が抱えている最も重要な問題ではない。世界各国、特にヨーロッパでは緊縮予算の傾向が広がっており、各国の債務返済の見通しが悪いことでマーケットが不安定となっていることが、今世界が直面している最も大きな問題である。

— 時期尚早な財政健全化がもたらす結果は目に見えている:成長が減速し、税収入が途絶え、財政赤字削減は失敗に終わる。

— 記録的に低い金利でお金を借りられるアメリカが現在しないといけないことは、今まで怠ってきた公共投資である。大規模な公共投資をすることで短期的な雇用を生みつつ長期的な成長をもたらし、さらには将来、国の負債の削減につながることになる。しかしながら、先見性のない金融市場は支出削減の圧力をかけている。

— さらに、ほかの経済問題も政治の行き詰まりから何も解決しないことも見えている。例えば、住宅の差し押さえ問題、中小企業の資金不足、従来これら企業に融資してきた中小銀行の倒産など。

— 反対にヨーロッパはと言うと、今より良くなることはないであろう。

— やっとの思いでギリシャとアイルランドを救出したヨーロッパであるが、ヨーロッパの自由市場経済はアメリカと同様にワークしないことが示された。

— アイルランドを見ればわかるように、土地バブルが弾けるとそのあとには大きな負債と過剰なキャパシティが残り、並大抵の努力では減らないのである、特に政治的に強いコネクションを持つ銀行が抵抗した場合にはなおさらである。

— 2011年の経済を予想するのはそれほど面白いものではない。答えは「暗い」で済むからである。アップサイドは少なく、ダウンサイドは大きいであろう。

— それより重要な質問は、ヨーロッパとアメリカが回復するにはどれだけ時間が必要なのか?そのマーケットが回復しないまま、アジアはどこまで成長を続けられるのか?である。

— 私は国内マーケットにフォーカスすることで成長は続くと予想する。そのためには中国もインドも経済の形を大きく変える必要があると思うが、可能であると考える。

— しかし、ヨーロッパとアメリカについては悲願的である。

— 今の問題を解決するには過剰にある能力を必要とするところにシフトすれば良いのである。例えば、環境問題の解決に向けて経済をシフトすれば良いのである。しかし、そのためには政治的な問題がある。

— アメリカの場合、共和党は経済を回復させるより、オバマが失敗することを望んでいる。

— ヨーロッパの場合27の国々がそれぞれの方向に向かって進もうとしている。そう考えるとアイルランドとギリシャを救出できたことは奇跡である。

— アメリカとヨーロッパでは、自由市場によってバブルが自由に成長できて、それが現在の問題を生むこととなったのである。これにより、自由市場の考えが衰退するかと思えば、その自由市場が緊縮予算を求めていることで政府や経済をドツボに嵌めようしているのである。

— もし政治が問題であるならば、政治が変わらなければ問題が解決しないことになる。それとも、過剰なキャパシティが自然と無くなるまで待つか、それとも経済に組み込まれている回復作用が時間をかけて直すかである。いずれにしても勝利はすぐそこにはない。

2011年は暗いようです、スティグリッツによると。
しかし、これを読みますと、過剰なキャパシティ、経済のシフト、緊縮予算、不良債権、政治の問題などなど、昔と今の日本に当てはまることがたくさんあるように思います。人間は人種に関わらず考えること・やることは変わらないのでしょうか?

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